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神経変性疾患を引き起こす星状細胞を発見~米スタンフォード大学の研究~Nature誌

2017.2.6

【神経変性疾患を引き起こす星状細胞を発見~米スタンフォード大学の研究~Nature誌】
米国スタンフォード大学の研究で、これまで脳の構造を物理的に維持したり、血液脳関門の調節に関与している星状細胞(アストロサイト)が、多くの神経編成疾患を引き起こす原因になる可能性があることを指摘し、2017年1月18日のオンラン版科学雑誌『Nature』で研究成果が紹介されました。
直径30~50μmで糸状の突起が放射線状に広がり、星の形に似ていることから名前がついた星状細胞は、中枢神経の神経細胞同士や、血管と神経細胞をつなぐ働きを持ちますが、その他の働きについては未知のままでした。
今回の研究では、炎症を誘発する物質に暴露された脳のミクログリアが、TNF-α、IL-1-α、C1qの3つの炎症を誘発させる物質を産生し、この刺激により休止状態の星状細胞が、「A1 星状細胞」に変換され、この細胞からさらに大量の前炎症物質を分泌させることが明らかになりました。
さらにA1星状細胞は、ニューロンの生存、増殖、シナプス形成および食作用を促進する能力を失い、ニューロンの死滅を誘発。アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症などを含む様々な神経変性疾患において、A1星状細胞が豊富に存在していることも明らかになりました。
一方でA1星状細胞の形成が阻害されると、ニューロンの死滅が減ることも判明。これらの結果から、A1星状細胞からは、ニューロンを死滅させる「強力な毒素(以下、神経毒)」が形成され、それが神経変性疾患を引き起こしているかの生が指摘されました。さらに、A1星状細胞が分泌する「強力な毒素」の働きを、薬学的に阻止する物質を特定したり、開発することで、新たな治療薬の開発や治療法の確立につながる可能性があるということです。
【出典】
Shane A. Liddelow, Kevin A. Guttenplan, Laura E. Clarke, Frederick C. Bennett, Christopher J. Bohlen, Lucas Schirmer, Mariko L. Bennett, Alexandra E. Münch, Won-Suk Chung, Todd C. Peterson, Daniel K. Wilton, Arnaud Frouin, Brooke A. Napier, Nikhil Panicker, Manoj Kumar, Marion S. Buckwalter, David H. Rowitch, Valina L. Dawson, Ted M. Dawson, Beth Stevens, Ben A. Barres. Neurotoxic reactive astrocytes are induced by activated microglia. Nature, 2017
http://www.nature.com/…/journal/vaop/…/full/nature21029.html