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都市の緑が温暖化から命を守る

2025.5.15

都市部の緑地を30%増加させることで、2000年から2019年の間に世界で最大116万人の熱関連死を防げた可能性があることが示されました。

この研究は、オーストラリアのモナシュ大学のユーミン・グオ教授が主導し、医学誌『The Lancet Planetary Health』に掲載されました。研究では、NASAのTerra衛星から得られた衛星画像を用いて、11,534の都市地域における緑地の増加と気温の関係を20年間にわたりモデル化しました。

その結果、緑地を10%、20%、30%増加させることで、人口加重平均の暖季気温がそれぞれ0.08℃、0.14℃、0.19℃低下し、熱関連死がそれぞれ86万人、102万人、116万人減少する可能性があると推定されました。

特に南アジア、東ヨーロッパ、東アジアの都市部では、緑地の増加による熱関連死の減少効果が大きいとされています。研究には、53か国830都市の死亡率と気象データを用いた多国間都市共同研究ネットワーク(MCC)のデータが使用されました。緑地の増加は、日陰の提供や蒸散作用による気温の低下に加え、精神的健康の向上や社会的交流の促進、大気汚染の軽減など、多面的な健康効果が期待されています。

この研究は、都市の緑化が気候変動による健康リスクを軽減する有効な戦略となり得ることを示しています。

 

【出典】 Yao Wu, Bo Wen, Tingting Ye, Wenzhong Huang, Yanming Liu, Antonio Gasparrini, Francesco Sera, Shilu Tong, Eric Lavigne, Dominic Roye, Souzana Achilleos, Niilo Ryti, Mathilde Pascal, Ariana Zeka, Francesca de'Donato, Susana das Neves Pereira da Silva, Joana Madureira, Malcolm Mistry, Ben Armstrong, Michelle L Bell, Joel Schwartz, Yuming Guo, Shanshan Li. Estimating the urban heat-related mortality burden due to greenness: a global modelling study. The Lancet Planetary Health, 2025; DOI: 10.1016/S2542-5196(25)00062-2

 

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