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脳梗塞に対する画期的な治療薬を発見

2015.7.9

新潟大学脳研究所(所長・西澤 正豊教授)神経内科の下畑 享良准教授を中心とする研究グループ(金澤雅人助教,川村邦雄医師,高橋哲哉助教ら)は、脳梗塞治療で最も有効とされる血栓溶解療法の弱点とされる合併症(脳出血・脳浮腫)を抑制し、かつ脳の神経細胞を保護し、炎症を抑える画期的治療薬を世界で初めて明らかにしました。この研究成果は,平成27年4月2日のBrain誌(Brain: A Journal of Neurology, 5YEAR IMPACT FACTOR 10.846)に掲載されました。

プレスリリース

研究の詳細

<研究概要>
1)「組織プラスミノゲン・アクチベーター(tPA)」を用いた血栓溶解療法は、血管に閉塞した血栓を溶かし血液の流れを再開するため最も有効な治療法です。しかし、治療可能時間が4.5時間以内と極めて短く、脳梗塞患者の5%未満しか治療の恩恵を受けられません。
2)これは、発症後、時間が経過すると、脳の神経細胞だけでなく、血管にも障害が起こり、脳出血や脳浮腫(脳のむくみ)を生じやすくなるためです。
3)研究グループは、プログラニュリンという欠乏すると認知症を引き起こす蛋白を、tPAと一緒に投与すると、tPAの副作用の脳出血や脳浮腫を防ぐのみならず、神経細胞を保護し、かつ炎症細胞を抑制して,脳梗塞のサイズまで縮小することを、動物モデルを用いて世界で初めて明らかにしました。

<成果のポイント>
プログラニュリンをtPAとともに使用することで、治療可能時間を延長でき、以下につながることが期待できます。
① tPAによる血栓溶解療法が行われる患者数の増加
② 副作用である脳出血,脳浮腫をおこす患者が減ることによる予後の改善
③ 脳梗塞の大きさを縮小する効果

今回の研究では、欠乏すると認知症を引き起こす蛋白(プログラニュリン)をtPAと一緒に投与すると、tPAの副作用の脳出血や脳浮腫を防ぐのみならず、神経細胞を保護し、かつ炎症細胞を抑制して、脳梗塞のサイズまで縮小することを、動物モデルを用いて発見しました。このような多彩な効果を持つ薬剤は,世界でも初めての報告で、画期的なものと考えられます。実用化されれば、現在4.5時間までの治療可能時間を8時間程度まで延長する可能性があり、tPA治療の恩恵を受ける患者数も3倍以上に増加することが想定されます。また、さらに脳梗塞自体の症状も軽くなる可能性が明らかになっています。