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アルツハイマー型認知症患者の認知機能変化を血液マーカーで測定

2015.7.8

新潟大学脳研究所遺伝子機能解析学分野の池内健教授らの研究グループとエーザイ株式会社は、共同研究により血液中の脂質代謝物質「デスモステロール」がアルツハイマー型認知症(AD)の患者に生じる認知機能の経時的変化とよく相関することを見出しました。本成果は、2015年3月 31日に米国学術誌『Alzheimer’s & Dementia: Diagnosis、 Assessment & Disease Monitoring』に掲載されました。
ADの診断は、従来、脳画像検査や脳脊髄液検査などが用いられていましたが、高価な機器が必要であることや検査の侵襲性などの課題がありました。そのため、侵襲性が低く、場所を問わず行える血液を用いた診断開発が求められおり、新潟大学とエーザイの共同研究グループは、ADの血液マーカーの開発に取り組みました。
本共同研究では、日本人のAD患者200人と認知機能が正常な高齢者200人の血中デスモステロールを質量分析法により測定し、AD患者においてデスモステロール/コレステロール比(以下 血中デスモステロール値)が有意に低下していることを明らかにしました。

また、血中デスモステロール値と認知機能の指標であるMMSE(ミニメンタルステート検査)も良好な相関を示しました。さらに、AD患者を経時的に追跡し、認知機能の変化と血中デスモステロール値の変化を観察したところ、認知機能の低下が著しい患者群では、血中デスモステロール値も著しく低下し、健常高齢者、軽度認知障害(MCI)の人、AD患者における経時的な認知機能の変動と血中デスモステロール値の変動も良好な相関を示しました。
今後は、認知機能が正常もしくはMCIの時期に血液中のデスモステロールを測定することで、将来の認知症発症の予測や薬剤の効果判定など、様々な応用の可能性が期待されます。実用化に向けて、さらなる研究が進行中です。