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神経難病「多発性硬化症(MS)」に伴う脳脊髄炎症を抑える新たなリンパ球を 動物モデルの腸上皮内で発見

2016.6.1

腸内環境からの刺激によって誘導される腸管粘膜組織のリンパ球(腸上皮内リンパ球)が、多発性硬化症(MS)に伴う脳脊髄の炎症を抑える効果があることを、国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP、東京都小平市 理事長:水澤英洋)神経研究所(所長:武田 伸一)の門脇淳研究員、 三宅幸子元室長(現:順天堂大学免疫学講座教授)、山村隆部長らの研究グループが、動物モデルで発見しました。
 MSは、脳や脊髄神経の働きに重要なミエリンが、自分自身の免疫によって炎症性に障害されてしまう‘自己免疫疾患’の一つで、 手足が動かしにくい、見えにくい、しびれる、 物忘れなど様々な神経症状を呈します。 MSの特定疾患受給者数は近年日本で急増しており、重要な医学的問題となっています。 研究グループは、その原因として、腸内環境の変化が原因ではないかとの発表を行ってきました。 しかし、その肝心の免疫学的な機序は、ほとんど分かっていませんでした。
 研究グループは、MSの動物モデルを駆使し、MSに伴う脳脊髄の炎症を抑えることができるリンパ球が腸の上皮内に存在することを発見しました。 このリンパ球をMS動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の血中に細胞移入すると脳脊髄炎症部位に遊走し、LAG-3という分子の発現が上 昇し、特有の機序で炎症を抑えることが分かりました。 また、そのリンパ球が腸管粘膜でできるためには、腸内細菌や、アブラナ科の植物などに含まれるアリール炭化水素受容体リガンドと呼ばれる物質の働きが重要 であることを見出しました。
 これらの結果より、腸内環境は、MSにとって‘良いリンパ球’の産生に重要であると考えられました。これは、食生活の変化に伴う腸内環境の異常により、 研究グループが見出した腸の‘良いリンパ球’が減少してしまうことが、MS発症の原因である可能性が想定され、今後この研究成果を礎にした画期的なMS治 療が期待されます。

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