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α-シヌクレインが脳から腸へと移動する特定の経路を発見

2017.1.9

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ドイツ神経変性疾患センター(DZNE)の研究で、パーキンソン病を含む一連の神経変性疾患に関与するタンパク質「α-シヌクレイン」が、脳から胃へと移動する特定の経路を持つことを、動物実験で確認し、2016年12月のオンライン版「Acta Neuropathologica」で発表されました。

以前から、α-シヌクレインが胃壁などの末梢神経系のニューロン内で発見されていること、さらにこれらの病変が、パーキンソン病患者の初期の病気に発見されることなどから、ある種のパーキンソン病は、胃や腸などの消化管で発生したα-シヌクレインが、次第に脳へと向かっていくことで発症するのではないかという仮説が立てられています。

そこでドイツ神経変性疾患センター(DZNE)の研究者らは、α-シヌクレインが脳から腸へと移動する可能性を検討するために、反対の観点から、脳で発生したα-シヌクレインが、胃や腸へと移動する長距離伝達経路の有無を確認する研究を進めました。

その結果、中脳で発現したα-シヌクレインが、胃壁の神経終末に達することが確認され、脳から胃への正確な経路を発見しました。α-シヌクレインは、まず中脳から延髄に移動し、延髄内では、迷走神経の長い繊維の中を移動しながら、約6カ月もかけて、胃壁に到達するということです。さらに、胃壁にある神経終末でのα-シヌクレインの蓄積が、神経損傷を引き起こしていることも明らかになりました。

この結果について研究者らは、α-シヌクレインが、あるニューロンから別のニューロンへ、長い神経線維を導管として体内のかなり遠くに移動することができること、そのため消化管で発生したα-シヌクレインが、脳へと移動する可能性も否定できないこと、特定のニューロンがα-シヌクレインを取り込み、伝達し、蓄積させる傾向があることなどを指摘しています。


●出典
Ulusoy, A., Phillips, R.J., Helwig, M. et al. Acta Neuropathol (2016). doi:10.1007/s00401-016-1661-y