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アルツハイマー型認知症の発症初期から神経細胞のシナプスの破壊を引き起こす原因を解明

2015.12.2

オー ストラリアのニューサウスウェールズ大学(UNSW)の研究によると、アルツハイマー型認知症のごく初期の段階で、神経細胞接着分子の「NCAM2」と呼 ばれるタンパク質が、「βアミロイド」というタンパク質の毒性によって分解・変質することで、脳の短期記憶を司る「海馬」の機能が低下して、アルツハイ マー型認知症が進行していくことが明らかになり、2015年11月の『Nature Communications』で発表されました。

NCAM2という神経細胞接着分子は、脳内の神経細胞から伸びている「シナプス」という情報伝達に必要な経路を接続して、神経細胞同士の情報伝達をスムーズに行い、脳内の情報ネットワークを維持するのに必要なタンパク質として知られています。

UNSW の研究チームは、海馬のNCAM2の数が、健常者に比べて、アルツハイマー型認知症の人は発症初期の段階から少ないことを発見。さらに、NCAM2が、ア ルツハイマー型認知症の人の脳に蓄積する異常なタンパク質「βアミロイド」によって分解されることがわかりました。

研究者らは、今回の研 究によって、アルツハイマー型認知症における神経細胞の損失が、βアミロイドの毒性が引き起こすNCAM2の破壊によって起こることが明らかになり、アル ツハイマー型認知症の新たな治療法として、βアミロイドタンパク質によって神経細胞接着分子NCAM2が破壊されないように守る方法を研究していくと述べ ています。

"Aβ-dependent reduction of NCAM2-mediated synaptic adhesion contributes to synapse loss in Alzheimer’s disease." Nature Communications, Nov 27,2015