2015.4.23
東北大大学院生命科学研究科の八尾寛教授(神経生理学、光遺伝学)らの研究グループは、青い光を当てることで、筋肉となる細胞を成長させる実験に成功しました。
衰えた筋肉の再生につながる技術で、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの治療法開発にも道を開くと期待されています。
グループは、マウスから採取した筋肉の基になる「筋芽細胞」に、光に反応するタンパク質の遺伝子を組み込んで実験しました。
細胞に510ナノヘルツ(1ナノは10億分の1)の青色光を当てたところ、繊維組織が規則正しく並んだ筋肉ができ、生成した筋肉組織は光に反応して収縮もしました。
筋細胞を成長させるには外部からの「働きかけ」が必要です。従来の電気や薬剤による刺激では、特定の細胞を選んで働きかけるのが難しく、細胞が損傷する欠点もありました。様々な刺激の中で、「光による刺激」は狙った細胞に届きやすい上、細胞の損傷も少ないことがわかりました。
研究が進めば、iPS細胞などを基にして、光に反応しやすい性質を持たせた筋芽細胞を作り、その細胞を体内に戻して光を当てることで筋肉の再生が可能になります。
筋肉の生成や収縮は、神経細胞の一種である運動ニューロンが制御しています。ALSは運動ニューロンが侵され、筋肉が徐々に衰える疾患で、日本のALS患者数は、厚生労働省の2009年の報告では8,492人。発症年齢を見ると50~74歳に集中しています。